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吉崎浩一郎

2020-05-28 公開

<吉崎 浩一郎 氏 プロフィール>
1966年生まれ 出身高校:東京都立小山台高校
1990年三菱信託銀行に入社。国際金融業務、法人融資業務を担当。1996年日本AT&Tにて国際通信サービスのスタートアップを実践。1998年シュローダー・ベンチャーズ(MKSパートナーズ)に参画。ベンチャー投資、バイアウト投資、企業再生投資等を幅広く実践。同社パートナーとして、全投資案件の意思決定及びマネジメントに関与。2005年カーライル・グループに参画。アジア(中国・インド・韓国・日本)向け成長投資チームにて中堅企業、成長企業への投資・買収を担当。2010年グロース・イニシアティブを設立、代表取締役に就任。ベンチャー、中堅中小企業への投資及びアドバイザリー活動を展開。大和クオンタムキャピタル(アジア向け成長投資)にてCIOを兼任。2013年海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)取締役 最高投資責任者(CIO)に就任。官民ファンドの立ち上げに従事。2017年グロースポイント・エクイティLLP設立、代表パートナー就任。中堅中小企業向け投資ファンドを組成。青山学院大学国際政治経済学部卒業、法政大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経営学専攻)。

<インデペンデンツクラブ正会員紹介>

コロナ禍をきっかけにベンチャーの世界はどう変わるか

吉崎 浩一郎 氏(㈱グロース・イニシアティブ代表取締役/グロースポイントエクイティLLP パートナー)


◆経営者・オーナーの「かかりつけ医」

 私は成長段階のベンチャー企業や中堅中小企業に対して投資や経営支援を行っています。経営者・オーナーと強い関係性を築き、事業戦略や経営全般、資本政策、事業相続など、様々な悩みを安心して相談できる「かかりつけ医」のような存在でありたいと考えています。
 現在は複数の上場・非上場企業の社外役員を任されつつ、PEファンドを運営し、また個人でも数社に投資しています。“様々なステージの会社に、経営者・VC・個人投資家などの立場で当事者として関わっており、いろいろなリアルを見て、また各立場の方からリアルな話を聞ける。”今回はそうした立場から、ベンチャーとベンチャーキャピタル(VC)双方の視点でお話できればと思います。

◆”冬の時代”がやってきた

 今後IPOは“冬の時代”、言い換えれば本物だけが残る時代になります。過去に見た景色ですが、この10年で急増した日本のベンチャーやVCはその時代を経験していない人が半数以上ではないでしょうか?当然ではありますが、どんな時代でもVCは投資を続けていきます。しかしながら、こういった状況下では既存投資先の経営悪化が噴出するので、フォローアップに時間を割かざるを得ません。LP対応やセカンダリー案件も増えることが予想されます。その結果、余剰資金はあってもリソースの問題で新規投資は難しいという状況に陥ります。
 日本のベンチャーファイナンスの特徴として、事業法人による資金が非常に多いという点が挙げられます。特にここ数年はCVCバブルと言われるように、事業法人が活発な直接投資を行っていましたが、その多くが資金を引き揚げることになります。企業は四半期決算で業績を見ているので、うまく行かないと分かった時は見切りが早いためです。無論すべてではありませんが、コロナ禍以前のような条件や資金額は期待できないでしょう。改めてベンチャーファイナンスにおいても”冬の時代”が訪れつつあるということを、まずは知っておいていただかなければなりません。

◆起業家はどうすべきか?

 では、こういった状況下で起業家はどうすべきか。守りに徹し、とにかく生き残ること。これに尽きます。サバイブできていれば淘汰される会社も出てくるので、相対的に自社のバリューが上がります。そのために、まずは固定費を圧縮するなど支出を抑えることです。過大な家賃の見直しや、過剰な人件費……たとえば青田買いしたエンジニアを減らすなど。エンジニアもバブルの様相を呈していましたが、その下駄が外れて二極化が進んでいくと思います。エンジニアも本気の人だけが残る時代になってくるでしょう。これは起業家やVCにも言えることです。そうやってキャッシュポジションを厚くし、筋肉質な組織を創り上げることが肝要です。
 リーマンショック後に生まれた言葉ですが、コロナ禍を経た「ニューノーマル」が再定義されつつあります。局面が変わればリソースの配分を変える必要がある。一方で勝負所を見極めること。経営戦略の基本です。この点はしっかり理解された上で、舵取りをしていただきたいと思います。

◆新しいファイナンス

 新しい考え方という意味では、クラウドファンディングには期待しています。寄付型や投資型など、類型が多様化しリスク・リターンがわかりづらくなっているので、これを見えやすく整理することで普及は加速すると思います。  また、個人の投資家やエンジェルがもっと増えて欲しいですね。金額的には大きくなくていいので、人数がたくさんいてほしい。日本は世界最大規模の個人金融資産を持っています。それを活用する方策として、ベンチャーへの資金誘導は理に適っていると考えています。

◆価値観の転換点

 今世紀に入ってから、アメリカ型の株主資本主義が日本を含め世界を席巻していました。キャッシュフローを追求し、少ない資本でいかに収益を上げるかが至上命題でした。これらによって確かに我々の活動も効率的になりました。しかし、得たものは何だったのでしょうか。これまで余剰資産や遊休資産は悪だと言われてきましたが、コロナ禍によって、実は余剰がなければ世の中が回らないことが分かってきました。もちろん、ベンチャーは余剰など持っていられません。しかし、余剰=悪という価値観が、これを機に大きく転換しそうだと感じています。完璧に治水された川は、流れの効率が良い。でも大雨が降って堤防が決壊すると、町が水浸しになってしまいます。かつては治水はそこそこにして、貯水池やため池を作って水があふれないように受け入れていました。これからの社会や企業にも、貯水池・ため池のようなものが必要とされるのではないでしょうか。

◆「小さな信用」そして「小さなイノベーション」

 個人的な話になりますが、外食をしたいけれど知らないレストランに行く気は起きません。誰が出入りしているか分からないからです。でも、信頼できる人がやっているお店なら安心感がある。そういう距離感の関係や場所の価値による「小さな信用」が重要になるのではないかと思います。ベンチャーはこうしたモノやサービスに対する価値観の変化を敏感にキャッチして、ビジネスモデルにするチャンスがあります。
 ベンチャーの本質はイノベーションです。よく日本にはGAFAが生まれないなどと言われますが、あれほど大きなイノベーションを起こす会社だけを日本で目指す必要はないと思っています。「小さなイノベーション」で良い。それがたくさんあればいい。日本には、日本人にはそっちの方が向いていると思うのです。
 今は大変な時期で大きな転換点を迎えていますが、こんな時代を経験できたことがラッキーだと捉えて、新たな世界を創っていきたい思っています。


※2020.3.25 文責:高田諭

THE INDEPENDENTS 最新号


【2020年6月号】


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<ポストコロナ特集>
松田修一、吉崎浩一郎、奥原主一、秦信行

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