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ベンチャーコミュニティを巡って第135回

2020-02-27 公開
國學院大学
名誉教授 秦 信行

インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏

早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。

ベンチャーコミュニティを巡って第135回


VC並びにベンチャーキャピタリストへの理解度(2)


・VC並びにベンチャーキャピタリストへの理解度(1)はこちら

10年位前、確かリーマンショック前だったと記憶するが、VC業界団体であるJVCAが厚生労働省のプロジェクトに応募しVCファームの雇用システムの現状や報酬体系についての調査を行ったことがある。筆者もそのプロジェクトに参加し、欧州のVC調査を行った。何故米国ではなく欧州のVCを調べたかというと、米国と違って欧州には比較的金融機関や事業会社系列のVCが多いように知らされていたからだ。同時に、米国VCについては相対的に多くの情報が日本にもたらされており、ヨーロッパの情報は少なかったからでもある。

調査は欧州全体のVC業界団体であるEVCAや英国の業界団体であるBVCAをはじめとして英国、フランス、ベルギーなどのVC、約10社に訪問し、ヒヤリング調査を実施した。

そこで得たファクトしては、まず業界団体であるEVCAやBVCAへのヒヤリングからはやはり欧州では金融機関などの親会社系列のVCが米国よりは多いこと、次に個別VCなど約10社へのヒヤリングからは、大学ないしは大学院卒ですぐにVCに入ってくる人材は米国同様ほとんどおらず、大半は他業界からの転職者であること、投資部員の職階としては米国同様アナリスト、ジュニア(ないしはアソシエート)、シニア、パートナーといった明確に規定された段階があること、米国ではアナリストやアソシエートが所属するVCでの階層を上がってパートナーになること、所謂内部昇進はほとんどないが、欧州ではかなりあること、経済処遇については基本給とボーナス(上職による評価給)、それとキャリー、日本で言う成功報酬の3段階に分かれていて基本給とボーナスはファンドのマネジメントフィーから支払われていること、キャリーないしは成功報酬についてはアナリストやジュニアはそれに与ることは出来ず、シニアないしはパートナー間で分配されること、など。また、系列VCにおいても報酬体系はVC独自のものを取り入れているようであった。

直接的な報酬とは別に、シニアやパートナーについては所属するVCが運用するファンドへの個人的なLP出資の権利、co-investment rightと謂われる権利を付与しているVCが多かった。これは余談だが、中にはファンドの投資先企業への個人的な投資もco-investment rightとして認めているところもあって驚いた。

上記のように欧州のVCの雇用システム並びに報酬体系についてはかなり詳細に聞くことができた。裏返せばそれは、そうした情報がかなりオープンになっていることを意味しているように思われた。同時に当時、リーマンショック前だったこともあり、欧州での他業界からのキャピタリストへの転職希望者は相当多いということだった。このことは、当時のVC投資の状況が良かったこともあるが、米国と並んで欧州でもVC並びにキャピタリストと言う職種への理解度が報酬体系なども含めて高いからでもあるように思われた。

翻って我が国のVC、キャピタリストの具体的な活動や処遇内容について、当時は勿論のこと、現状でも社会の理解度はまだ低いように思う。その原因の一つは業界内部からの情報発信が不足していることもあるのではなかろうか。


※「THE INDEPENDENTS」2020年1月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です

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