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令和時代のスタートアップ・エコシステム

2020-01-30 公開

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
理事長 市川 隆治 氏(右)

1978年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。パリ第2大学に留学した他、JETROストックホルム事務所長、在仏日本国大使館参事官、財団法人交流協会台北事務所副代表といった在外ポストを経験し、国土交通省大臣官房審議官を最後に2007年に退官。全国中小企業団体中央会専務理事を3年間勤めた後、2010年8月に一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター理事長に就任。

インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏(左)

早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。

令和時代のスタートアップ・エコシステム


<Vol.1>一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター


このコラムは、現在全国で数多く生まれているスタートアップ支援組織や支援団体を対象に、その組織や団体が生まれた背景や経緯、支援内容の特色、組織としての今後の方向性、組織からみた日本のベンチャー・エコシステムの現状、問題点や課題などを、組織・団体のトップへのインタビューを通じて紹介するものである。第1回目は、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの市川隆治理事長に登場いただく。

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターは、日本のベンチャーの発展を支援する目的で、1975年当時の通商産業大臣(現在の経済産業大臣)の許可を受けて設立された財団法人研究開発型企業育成センターを母体とするベンチャー支援組織である。当初はベンチャーの資金調達のための債務保証事業が中核的な事業であったが、VCなどの拡大に伴い債務保証事業を2002年度に停止した。 その後、2012年度に一般財団法人に移行すると同時に、現在は設立当初から継続して行われているベンチャーキャピタル等投資動向調査などの「調査・情報提供」事業、特定の課題に関する調査研究を通じた「政策提言」事業、起業家と支援者の交流促進のための「起業環境整備」事業を展開し、意欲あるベンチャーの創出と発展を支援している。

秦:ベンチャー支援組織としてVECという組織の特色、位置付けをどのように考えておられますか。


市川理事長:米国のベンチャーを学び、日本でもそうした新しい会社が生まれることを支援する目的でVECは1975年に創設されました。最初は資金調達にあたっての債務保証事業を始めました。2000年以降、日本でもVCが発展し、債務保証付きで借入するより投資による資金調達の方が望ましいということで、2002年度を以て債務書保証事業は止めました。また、ベンチャーを投資家に紹介するといったイベントなどは民間のVC等がやり始めたので彼らに任せ、VECは設立以来続けていた日本のVC投資についてのアンケート調査での投資データの収集・情報提供といった地道な仕事を主にやっています。調査・情報提供という仕事は、秘匿性の担保という問題もあって公共性のあるVECが行うべきだということで続けていますし、今後も続けていくつもりです。

秦:「調査・情報提供」事業の成果が現在『ベンチャー白書』という出版物になっているわけですが、この『ベンチャー白書』もここ10年位の間にかなり内容が変わってきていますね。


市川理事長:そうですね。確か2009年までは基本データだけだったのですが、その後文章や解説、さらには提言も付けるようにしました。そして、2014年度から「白書」という呼称にして一段と分析や解説を増やし、トピックス的なテーマでのコラムや各省庁の支援プログラムなども載せるようにしたわけです。同時に英文版の発行もスタートしました。
 この間、2013年からは、ベンチャー投資・ファンドレイズについて四半期ごとにデータを集計する業務をJVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)から引き継ぎ、「直近四半期投資動向調査」として和文・英文で公表を始めました。

秦:私も毎年「白書」を拝見していて、内容豊富で冊子自体が重くはなりましたが大変読み応えのあるものになったように思います。ただ、「白書」自体の内容の問題ではないのですが、VC投資データを見ていますと、残念ながら投資額が米国や中国などと比較して非常に小さいですよね。そのあたりも含めて日本のベンチャー・エコシステムについてどのようにお考えですか。


市川理事長:日本のVC投資は着実に拡大しており、若手の起業家も増えているようでIT分野に限って言えばエコシステムも整いつつあるようには思います。とはいえ、今おっしゃったように米国や中国と日本のVC投資額とを比べると残念ながら桁違いの差がある。その原因は、エコシステムの底辺部分、言ってみれば見えない部分というか、土台の部分にあると私は思っています。具体的に言うと、労働と教育です。
 まず労働ですが、日本の労働市場の問題点は流動性が低い点です。これでは大企業から優秀な人材がなかなか出てこない。確かに最近では転職が増えているようですし、経団連も新卒一括採用に対して疑問を呈しています。政府も働き方改革を打ち出していて、労働市場の流動化に向けた取り組みが活発化しているようですが、まだ十分ではないと思います。この点が改善されると潜在的に高成長が期待されるベンチャーに優秀な人材がより多く採用されることで潜在的な成長力が顕在化すると思います。
 もう一つが教育です。確かに大学レベルではアントレプレナー教育が盛んになって来ていて大学発ベンチャーも増えてはいます。とはいえ、その勢いは米国や中国と比較すると依然弱いように思います。その原因について私は、高校までの教育の在り方にあるように思っています。最近私は「起業家教育」という言葉に代えて、起業する力や能力を育成するという意味で「起業力教育」という言葉を使っていますが、日本は大学以前の小・中・高の教育段階での「起業力教育」が足りないように思います。以前から私は「ベンチャー白書」などに「起業力教育」の必要性についコラムを書かせて頂いてきました。先頃それらをまとめた冊子である『君と世界はビジネスでつながっている』をVECで出させてもらいました。同時にその冊子には、「起業力教育」の必要性を「緊急提言」として発表させて頂きました。
 「起業力教育」とは、従来の知識を教える教育に代わって子供たちに自ら考えさせる教育、子供たちに自ら課題を発見させ、その解決策を考えさせる教育です。日本でいままで行われてきた知識と正解を教える教育とは違うのです。そうした教育を日本で根付かせるためにVECは、米国のビジネス界の次世代リーダーを育成する高校生のプログラムであるDECA(Distributive Education Club of America)、その一環として年1回行われている高校生のビジネスプランコンテストICDC(International Career Development Conference) を応援し、昨年は日本の高校生にも参加してもらいました。また、シリコンバレーで成功した起業家の一人である曽我弘(現・(株)カピオン代表)さんが開催されているシリコンバレーの高校教師を招いての1週間のサマープログラム(GTE)も応援しています。

秦:最後にVECの今後の活動についてお聞かせください。


市川理事長:先程も申し上げた様に、日本でも社会課題をテーマにする起業家や世界を目指す若い起業家が増えていて起業家活動は活発化しているように思います。同時に、VC投資も拡大基調にあります。とはいえ、グローバルに見るとまだまだの感があります。その意味でこれからのVECは、今までの「ベンチャー白書」の作成といった「調査・情報提供」事業などを継続させていくことは勿論、先程述べた高校生以下の世代への「起業力教育」の必要性を広く認識してもらうための広報活動、更には税制の問題などについての政策提言も従来にも増して積極的に行っていきたいと考えています。

※「THE INDEPENDENTS」2020年1月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です

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