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知的財産判例に学ぶ企業活動(19)

2020-01-23 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/

知的財産判例に学ぶ企業活動(19)

特許は、販売前に出願すべし。

平成29年4月20日判決(平成28年(ワ)第298号)[ドラム式洗濯機使い捨てフィルタ事件]


 今回は、特許権者が、特許権侵害を提起したが、特許出願前の自身の販売行為によって、特許が無効となり、侵害が否定された事例を紹介します。

1 事案

 本件は、「ドラム式洗濯機使い捨てフィルタ」についての特許権を有する原告が、ドラム式洗濯機使い捨てフィルタを製造販売する被告に対し、同製品の製造販売の差止、損害賠償等を求めて特許権侵害訴訟を提起した事例です。
 本件では、出願日(2014.11.26)より以前に、原告により、特許権にかかる「ドラム式洗濯機使い捨てフィルタ」が、Q1生協(2014.6.2)と、Q2生協(2014.10.10)にて販売されていました。
 したがって、通常であれば、特許権にかかる発明は、「出願前に日本国内において公然実施された」ものであり、新規性が喪失しているとして、無効とされるものです。
 ところが、本件では、原告により、Q1生協の販売行為を対象として、新規性喪失の例外手続(特許法30条)が取られていたために、Q1生協での販売行為に加えて、Q2生協での販売行為も、一連の行為として、新規性が喪失していないものと取り扱われるかが争点となりました。

写真

2 大阪地裁の判断

 大阪地裁は、「同項が,新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであることからすると,権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような場合には,本来,それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが,手続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連する公開行為によって公開された場合については,別個の手続を要することなく同項の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ,これにより本件についてみると,証拠(乙16の1,2)によれば,Q2コープ連合及びQ1生活協同組合は,いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にあるが,それぞれ別個の法人格を有し,販売地域が異なっているばかりでなく,それぞれが異なる商品を取り扱っていることが認められる。すなわち,上記証明書に記載された原告のQ1生活協同組合における販売行為とQ2コープ連合における販売行為とは,実質的に同一の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはできず,そうであれば,同項により上記Q1生活協同組合における販売行為についての証明書に記載されたものとみることはできないことになる。」として、原告の特許は、Q2生協での販売行為を理由として、新規性を喪失しており、無効理由があるとして、特許権侵害は成立しないと判断しました。

3 本裁判例から学ぶこと

 特許出願前に、発明の内容が公に知られる状態となっている場合、新規性が否定され、特許は拒絶理由・無効理由を有することになります。他方、出願前に発明が公知となってしまった一切の案件を特許権として保護しないことは、保護に欠けるものとなってしまうので、特許法は、出願時に公知行為を特定して新規性喪失の例外手続をした場合、当該公知行為によっては新規性が喪失していないものと取り扱うことにしています(特許法30条)。  本件では、原告は新規性喪失の例外手続を行っていたものの、公知行為としてQ1生協での販売とQ2生協での販売という2つの行為をしていましたが、Q1生協での販売のみを対象として手続きを行っていたため、同制度の利用による救済が受けられませんでした。
 このように、特許法では、新規性喪失を救済する制度が存在するものの、これが例外手続きであるので、その運用・解釈は厳格なものとなります。いざ、事業が開始した場合の、営業活動、販売活動は、意図せぬ方向に拡散し、関係者全員の行動をコントロールすることも容易ではありません。本件のように新規性喪失の例外制度は、非常に厳格に運用されることに鑑みると、「特許は販売前に出願すべし」との原則 を徹底されることが好ましいと考えます。

※「THE INDEPENDENTS」2020年1月号 - p22より
※2019年12月号掲載時点での情報です

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