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帯広インデペンデンツクラブ

2019-10-10 公開

「グローバル企業を育てる十勝のベンチャーコミュニティ」

米沢 則寿 氏(帯広市 市長)

秋元 和夫 氏(帯広信用金庫 常務執行役員 地域経済振興部長)

鮫島 正洋 氏(弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士)

<モデレータ>秦 信行(國學院大學 名誉教授/インデペンデンツクラブ 代表理事)


■帯広市の起業家支援事業

米沢:私は30歳でベンチャーキャピタル大手のJAFCOに入社後、北海道やロンドンで上場する可能性を秘めた企業への投資業務を経験しました。札幌市のDCMホーマックやアインファーマシーズなどは出会った頃はまだベンチャー企業でしたが、東証一部上場企業にまで大きく成長しました。ベンチャーキャピタルは現在と将来の成長ギャップを見つけて投資することがビジネスです。しかし、当時のベンチャーキャピタルは農業分野にだけは全く投資していませんでした。近年、農業は今後の可能性に期待できる領域として注目されつつあります。私は市長として帯広・ひいては十勝地域全体の食や農業に焦点を当てて、地域の発展に貢献していきたいと考えています。
 「フードバレーとかち」は市長選時の公約の一つで、食・農を中心に、新たな知識と地域固有の価値を創造し、十勝に人の流れを生み出すことを目指す地域成長戦略です。2011年7月にフードバレーとかち推進協議会を設立、同時に帯広市と管内町村との間で、「定住自立圏」を形成し、全市町村議決の上、地域産業の振興のほか、防災や福祉・医療、環境など、幅広い分野での連携を進めています。さらに、十勝の19市町村で国の「国際戦略総合特区」や「十勝バイオマス産業都市」の指定・認定を受けました。十勝ならではの一体感や結束力を制度的な枠組みで裏付けしながら、強みを活かした広域マネジメントの基盤をつくり、推進力としています。
 市長就任から10年が経ちますが、革新的な事業に挑戦し、成功する人が増えていくには、まずは挑戦そのものの絶対量を一定のレベルまで引き上げるべきだという想いで様々な施策を展開してきました。5年前からは「十勝・イノベーション・エコシステム」と称する事業創発を支援する取り組みを行っています。「十勝人チャレンジ支援事業」では、十勝で地域産業に携わる個人あるいはグループに対し、国内だけでなく海外を実際に訪れる研修・調査研究等の必要経費を補助しています。「とかち・イノベーション・プログラム」は、全国から革新的な取り組みに挑戦している人々を招いて、十勝地域の起業マインドを持った人材と交流するいわば混血型の事業創発プログラムです。これまでに400人が参加し、4年間で38の事業構想が生まれ、その中で14件が事業化しています。これらのプログラムの参加者へのフォローアップや事業創発を促す「十勝ドリームマップ会議」も毎年開催されています。
 十勝を舞台とするNHKの連続テレビ小説「なつぞら」では、草刈正雄演じる泰樹が戦争で家族を失ったヒロインなつに対して「お前のそばに、もう家族はおらん。だが、わしらがおる」と言葉を掛けました。この言葉こそが、十勝の持つ連帯感を的確に表していると思いました。十勝には、頑張っている人に対して皆が助け合って成長を応援していくという精神が強いと感じます。挑戦する起業家の支援育成も同じです。今後も私自身のベンチャーキャピタル的な視点を活かしながら、帯広、十勝の発展に寄与していきたいと思います。

■帯広信用金庫の地域貢献

秋元:私ども帯広信用金庫は、1916年の創業以来、十勝の産業・経済・社会の持続的発展を支援してきています。具体的には、創業・事業承継支援をはじめ、商品づくりや販路開拓等のマーケティングを中心とした本業支援、経営者や高校生等を対象にした人材の育成、多様な農業の推進や新産業の創出による十勝の面的再生などに取り組んでいます。
 例えば人材育成についてご紹介すると、今年、第19期を開講した「おびしん地域経営塾」では、経営環境の変化に対応できる経営者や経営幹部を育むことを目的とし、人気講師陣による座学に偏らないカリキュラムや塾生による異業種交流の場を提供しています。第18期までに延べ609名が卒業し、その多くが十勝の経済界・産業界で活躍しているほか、志信会というOB・OG組織が組成され、地域間交流も行われています。
 十勝の面的再生について敷衍すると、地域の連携システムをつくり、新産業の創出や産業クラスターの形成に繋げていくための取組みも行っています。これまで、江戸時代から昭和にかけて醸造されていた地酒の復活と新たな食文化の創造を目指し、十勝農業の多様化に資する酒米づくりから取り組んだ「とかち酒文化再現プロジェクト」、国産落花生の需要拡大等を受けて十勝の産地化や加工品の開発を目指す「“TOKACHI Grand Nuts”(十勝グランナッツ)プロジェクト」、酪農王国・十勝の持続的発展にも資する国内初の「ナチュラルチーズの共同熟成庫」の建設・運営など、いくつものプロジェクトを組成し支援してきています。もとより金融機関としてできることには限りがありますので、産学官・農商工と金融が連携し、多面的な支援を中長期的視点から継続的に実施しています。
鮫島:私は全国各地を訪れる機会があるのですが、成功している地域は首長が確固たるポリシーを持ち、その想いが行政、政治、ひいては市民全体に浸透していると感じます。それだけでなく、金融機関との密接な連携も不可欠です。帯広なら「食」のように自分の地域に優れたものがあるにもかかわらず、その素晴らしさに気付いていないケースが日本各地にあります。帯広市は、米沢市長自らがマーケティング視点を持って施策を行い、実際に帯広信金をはじめとする金融機関や地域の人々がそれに付いてきている点がこの地域の競争力の高さを表していると感じました。

■十勝発ベンチャー創出への課題

鮫島:最近では農林水産省がベンチャーに注力していることもあり農業系のベンチャーが増えてきています。技術や生産設備の問題はクリアできますが、全国に販路を拡大するには、大手企業の手が必要にならざるを得ません。そこで大企業からベンチャーを守る的確なアドバイスのできる地元の法律家を全国で育成していくことが今後の課題だと思います。
秦:かつてシリコンバレーで弁護士が有価証券の目論見書を書いていたのに驚いた記憶があります。日本の弁護士や弁理士もより深くベンチャーやビジネスに関わるようになってほしいですね。
米沢:この地域には融資で事業発展を考えている人が圧倒的に多く、エクイティ調達の文化が浸透していないと感じました。これからベンチャーを作る人たちに対して、エクイティとは何か、リスクヘッジとは何かといったことを伝えていかなければなりません。
秦:地域社会に貢献する企業には様々な形があると思いますが、私は企業は「公器」だと思っています。できるだけ透明性の高い体制を敷き、様々な意見が外部からも入ってくる中で新しいアイデアが生まれるような、そんな会社を目指してほしいと思っています。


※「THE INDEPENDENTS」2019年10月号 - P10-11より
※冊子掲載時点での情報です

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