今日から取り組める 簡単な経営のヒント 第6回
「2-6-2の法則」と人材育成方法
―2-6-2の法則
ご存知の方も多いと思いますが、「2-6-2の法則」というのは、会社などの組織の中で、
1.上位の2割が、実績・生産性が高く積極性のある優秀なグループ
2.中位の6割が、上位とも下位ともいえない平均的な母集団
3.下位の2割が、実績・生産性が低く積極的に行動しないグループ
となるように必ず分化されてしまうという法則のことです。
よく中小企業経営者から、「ウチには優秀な社員がいない。もう少し優秀な社員が採れれば。」といった愚痴をお聞きします。しかし、実際に優秀な社員ばかりを採用できたとしても本当にうまくいくのでしょうか?野球で言えば一時の読売ジャイアンツ、サッカーなら一時のレアルマドリードのように、スーパースター集団でも優勝できないのです。この「2-6-2の法則」は、エリートばかりを集めても結局は2-6-2の構成になるし、たとえ下位の2割をクビにしたとしても、残った中で新たな2-6-2が生まれるということなのです。結局、全員が優秀な成果を残せることはあり得ないということになります。人材育成や組織マネジメントにおいて、経営者やマネジャーは、次のことを充分に理解しておく必要があります。
●優秀な個人の集団にしたいと思わないこと
●残念ながら足を引っ張る下位2割が必ず生まれること
●下位の2割は、上位の2割が優秀であり続けるために、たまたまその組織ではできない2割を演じているにすぎないこと
●万一彼らを捨ててしまうと、優秀な2割の人たちは優秀でいられなくなってしまうこと
●下位の2割を捨てることなく活かす手立てを考えること
―心理学での3タイプ
心理学の権威である横浜国立大学准教授の堀之内高久氏の考えによれば、上位2割がなぜ生産性が高く優秀であるのは、彼らは『気づきが多く、そして行動が早い人』だからだそうです。
1.自己成長モデル
気づきがあり変われる人
2.現状維持モデル
気づきはあるが変われない人
3.ビジターレベル
気づきもなく変われない人
こうしてみると、人が行動を起こすための前提は「気づき」であり、「気づき」がない限り人は主体的能動的に行動できないし、自己成長しないということです。上司が部下に細かい指示や命令をしないと行動できなくなってしまっている組織は、「気づき」を与えられていない可能性があります。

―3タイプへの指導育成方法
相手に気づきを与え、行動を促すスキルのひとつとしてコーチングがあります。実は、これらの3タイプに応じて、適切とされる指導育成方法が異なります。
自己成長モデルに対しては、ある程度のストレスを与える方が良いとされます。高い目標や難易度の高い業務を与えると彼らはそこから多くの気づきを得て、それらを学びに変え、次々と行動を起こします。上司は甘えを提供するより、ある程度のストレスを与える方が彼らの望む方向に導くことができるのです。ただし、「気づき」がある=ストレスを抱え込みやすいということでもあるので、ストレスの与え過ぎには要注意です。
現状維持モデルやビジターレベルに対しては、彼らの話に多少時間をかけて承認と傾聴することが良いとされます。まず彼らを承認した後、質問を投げかけ、自ら考え話させることで、自ら気づくきっかけを作り行動に向かうサポートをする必要があります。質問を通じて彼らの思考を手助けし、自分自身で「気づく」までそれを繰り返し、行動への障害を取り除き、行動に繋げるのです。その際、本人が困難と感じる行動を促すのではなく、比較的容易に踏み出すことのできる小さな一歩を設定してあげることが大切です。
『やる気があるから成果が出る』のではなく、『(小さくても)成果が出るから、やる気が出る』のだということです。このことを理解していないと、いつまでも組織の問題で悩み続けることになります。
ある会社では、2-6-2のそれぞれのレベルの社員を混合した営業チーム編成をしていましたが、能力別のチーム編成にしたところ、中位・下位のチームの社員からトップセールスが誕生したケースもあります。
【起業家インタビュー】
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【今日から取り組める 簡単な経営のヒント5】
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※「THE INDEPENDENTS」2012年4月号 - p23より