<起業家インタビュー>

■ 音響機器メーカーからスピンアウトで集音器を開発

―もともと静岡のスター精密で23年間、音響部品の事業に携わってこられましたね。

 携帯電話や、家電製品、自動車向けのスピーカーやマイクロフォンなど、「音を出す・拾う」技術を中心にキャリアを積んできました。海外の主要顧客による事業撤退をきっかけに、事業部そのものが解散することになり、それが自分の人生を見つめ直す大きな転機となりました。

―2013年にCOSOMIC TRADING㈱を立ち上げました。

 独立後は音響部品の輸入販売からスタートしました。スター精密時代の取引先との信頼関係もあり、部品ビジネスとしては比較的順調な立ち上がりでした。ただ次第に、「自分たちの技術で完成品をつくり、社会課題に直接向き合いたい」という思いが強くなっていきました。

―集音器を手がけられたきっかけは。

 日本には難聴の方が非常に多い一方で、補聴器には価格や心理的なハードルがあります。集音器は医療機器ではなく、「聞こえにくさを補う生活用品」として気軽に使える存在です。補聴器の一歩手前の選択肢として、大きな可能性があると考えていました。

―貴社の技術面での強みはどこにありますか。

 最大の強みは、自社で部品設計を行い、製造は外部に委託するファブレス形態です。音の出入り口となる部品設計を独自に開発することで、騒音環境下でも確実に音声を届ける事が実現できます。さらに、開発初期段階からコスト最適化の提案ができる点も特徴です。これは長年、音響部品事業を続けてきた私たちならではの強みです。

―コロナ禍では業績面でも大きな影響を受けました。

 正直、会社として最も苦しい時期でした。2021年頃は半導体不足や自動車業界の停滞の影響を受け、売上は損益分岐点を下回り、創業以来最大の赤字を計上しました。ただ、この期間に音の完成品事業に経営資源を集中し、騒音環境下でも確実に通話できる自社プロダクトの開発に大きく舵を切りました。既存の部品事業で準備してきたプロジェクトも複数立ち上がり、その結果、2023年には売上が約8億8,000万円まで回復し、営業利益も1億円を超える水準まで改善しました。現在も売上10億円規模の安定成長を視野に入れた事業運営を続けています。

■ 音に関する社会課題を解決する自社プロダクト

―2024年に社名をSOUNDYに変更されました。

 OEM事業として集音器の開発・供給を行っていましたが、次第に「自社プロダクトで価値を届けたい」という方向性が明確になってきました。そこで、音(Sound)で価値(Value)を生み出すという意思を込めて、社名をSOUNDYに変更しました。OEM中心の会社から、自社ブランド・自社プロダクトを軸とする会社へ転換する意思表示でもあります。

―そこで騒音環境対策用に「AURO」が誕生しました。

 「AURO」は、マイク・スピーカー・耳栓を一体化した騒音環境専用イヤホンマイクです。耳栓構造によって外部の騒音を物理的に遮断し、耳の中に伝わる自分の声だけを拾う独自構造を採用しています。この仕組みは特許も取得しています。そのため、騒音下でも非常にクリアな通話が可能で、防塵マスクやガスマスクと併用しても支障がありません。
騒音環境専用イヤホンマイク「AURO」耳からの声で通話する「AURO」

―どのような分野で騒音対策問題が発生しますか。

 消防、建設現場、製造業、医療現場、プロスポーツチームなどで実証や導入が進んでいます。特に消防分野では、騒音下で指示が確実に伝わることが人命に直結するため、非常に強い関心を持っていただいています。「音」に国境はありません。音に関する世界共通の課題に、これからも取り組んでいきたいですね。
作業現場でのWEB会議は機械音・作業音で話しづらい静岡市消防局で「AURO」を検討中

―最後に、上場を目指す理由を教えてください。

 現在、資金調達面で大きな不安はありません。一方で、今後コンシューマー向け製品を本格的に展開していく上で、社会的信用は不可欠だと考えています。上場はゴールではなく、信頼を可視化するための手段です。まずは名古屋証券取引所NEXT市場への上場を目指し、その先の成長につなげていきたいと思います。

interviewed by kips 2025.12.2




【SOUNDY株式会社】
設 立:2013年10月11日
所在地:静岡県静岡市清水区草薙1-13-19
資本金:18,700千円
事業内容:オーディオ用電子部品の企画開発・販売、OEM製品の企画開発・販売
従業員:23名

SOUNDY株式会社 代表取締役 山田 裕嗣 氏

 

【代表者略歴】

SOUNDY株式会社
代表取締役
山田 裕嗣 氏 Yamada Hirotsugu

 
生年月日:1967年3月9日
出身高校:愛知県立熱田高校

1991年3月 静岡県立大学 国際関係学部卒業
1991年11月 スター精密㈱入社、コンポーネント事業部配属
2013年2月 同社退職し、BSE JAPAN設立、代表取締役就任
2013年10月 COSMIC TRADING㈱設立、電子部品輸入事業を始める
2019年11月 BSE JAPAN㈱を吸収合併
2024年11月 社名をSOUNDY㈱へ変更


※「THE INDEPENDENTS」2026年1月号 - P.4-5より